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最高裁判所第二小法廷 平成9年(オ)375号 判決 1997年4月25日

大阪市中央区伏見町四丁目四番一号

上告人

日本コルマー株式会社

右代表者代表取締役

神崎茂

右訴訟代理人弁護士

井上隆晴

青本悦男

細見孝二

名古屋市中区栄五丁目八番二八号

被上告人

株式会社フタバ化学

右代表者代表取締役

志水徹男

右訴訟代理人弁護士

後藤昌弘

右当事者間の名古屋高等裁判所平成八年(ネ)第八一号、第一〇四号販売差止等請求事件について、同裁判所が平成八年一〇月二九日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人井上隆晴、同青本悦男、同細見孝二の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田博)

(平成九年(オ)第三七五号 上告人 日本コルマー株式会社)

上告代理人井上隆晴、同青本悦男、同細見孝二の上告理由

原判決が謝罪広告の請求を認めた部分には、次のとおり不正競争防止法第七条の規定の解釈適用を誤った法令適用の違背があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるので、破棄さるべきである.

一、 不正競争防止法第七条は、「不正競争を行って他人の営業上の信用を害した」場合に「営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる.」と規定しているが、本件においては以下の事実よりして未だ被上告人の営業上の信用を害したとみることを得ない場合であり、原判決がこの事実より営業上の信用を害したと判断したことは右法令の解釈適用を誤ったものである。

1. 被上告人は、本件製品につき、上告人に対し、事前の通知や警告を何らすることなく平成四年八月二〇日に本件訴訟の提起と製造販売展示禁止の仮処分の申請を行なったことより、上告人側はその仮処分の審理のなかでこれに対応することとなり、第二回目の審尋期日において争いを回避するため自主的に本件容器を変更する旨を明言し、その後の審尋期日において変更後の容器の図面を裁判所、被上告人に提示したうえ、同年一二月末をもって本件容器の製造を中止したのである。このことより右仮処分申請はその後取り下げられている。

2. 右経過よりして、本件製品の製造販売はわずか一〇月未満でしかなかったのであり、しかも製造販売中止より原判決言渡まですでに四年弱を経過しているのである。

3. 上告人の本件製品は、スーパーマーケットなどの小売店で一本一〇〇〇円前後で販売されているものであるのに対し、被上告人の製品は旅館、ホテル等の宿泊施設の売店での販売と、そこで購入した者から葉書での注文によって販売する注文販売に限られており、しかも一本二七〇〇円である。このように、両製品の販売方法、販売価格が違っていることから、当然販売対象たる顧客の層も全く異なっているのである.

二、 不正競争防止法第七条の規定は「営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。」と規定していて、信用回復措置を命ずるか否かは裁量とされており、この裁量については、信用回復措置なかでも謝罪広告はそれを命ぜられる側に対して信用を害する結果となることから、そこにいわゆる比例原則が働くものと解されるべきである。すなわち、不正競争防止法違反の所為により営業上の信用が害されたとしても、その態様、程度、事後措置等の諸般の事情よりみて必要な限度においてのみ回復措置を命ずるべきであり、信用阻害と回復措置との間に相応の比例が保たるべきである。

本件おいては、前記1ないし3のとおりの事情、すなわち上告人側においてすばやく回避の措置をとったこと、そのため本件容器使用の期間が短く、また顧客層の違いからしても、被上告人の信用が害されたとしてもその程度は大きくないこと、本件容器使用中止よりすでに長期経過しており、その影響は全く考えられないことなどからして、右にいうところの比例原則のうえから上告人に謝罪広告を命ずる必要のないものである。しかるに原判決がこの比例原則を無視或いは軽視して謝罪広告を命じたことは右法令の解釈適用を誤ったものである。

なお、原判決が不正競争防止法の改正により「すべての類型を対象として謝罪広告を認め、被害者の救済の充実を図ることとした趣旨を勘案すると、」とし、法改正によって右にいうところの比例原則の解釈が変わったがごとく判示しているが、本件事案は右法の改正前のものであり、しかもこの改正は信用回復措置が命じうる場合の不正競争の範囲を広げただけであって、回復措置を改正前に比し容易に認めようとしてなされたものではない.したがって、法改正を理由に謝罪広告を認める原判決は不正競争防止法第七条の解釈を誤ったものである.

以上

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